Find Your Compass(第3回)
アフターデジタル時代の顧客接点を考える

 皆さん、こんにちは。Hands-Onコンサルティングの野元です。現在、保険代理店の皆さまの気軽な相談窓口を目指して、様々な活動を行っております。本ブログもその一環としてお届けします。ブログNo3は、~アフターデジタル時代の顧客接点を考える~です。

1.ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ
 デジタル時代の顧客接点は、ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチの構成で考え、この3つの影響力の異なる接点を組み合わせて顧客との関係を築くことが有効だと言われています。
 「ハイタッチ(人接点)」は、面談など、人が個別対応する最も密接なリアルの接点です。お客さまの様子を感じながら、常に親密なコミュニケーションがとれる貴重な場であり、お客さま自身の「体験」や「感情」を通して、より高い価値(=信頼)を感じていただくことがポイントになります。「人ビジネス」である代理店の皆さんがこれまで最も強みを発揮してきた顧客接点である
ことは言うまでもありません。
 「ロータッチ(人・場所接点)」は、リアル接点の一つですが、人が複数人を相手にする接点をいいます。店舗やイベント、ワークショップなど、同時に複数人に対応するケースであり、「人が集まる場」をイメージすれば分かりやすいと思います。「WEBでは共有しにくい体験」を提供する場となります。
 「テックタッチ(デジタル接点)」は、相手の人数に制限なく展開可能で、人が介在する必要がない接点(オンラインサロンなど人が介在する場合もありますが)を指しています。多くの顧客と頻繁に接点をつくる土台と言えます。アプリやデジタルサービス、メールやオンラインコンテンツなど、デジタルテクノロジーで量産可能な接点となります。
 下記の図は、上記3つの接点構造の影響範囲を示したものです。

 デジタルが土台となるこれからの環境変化を踏まえると、デジタルとリアルを別の世界のものとして分けてとらえるのではなく、同心円状に位置する接点の態様の中でとらえることが必要であると言われています。それぞれの接点には得意・不得意な分野があり、相手の状況や行為の目的などによって優劣も生じますが、どれか一つで全て済ますということではなく、顧客との最適な関係の構築に向けて、あくまでも「使い分け」る、あるいは「組み合わせ」ることが必要なことは言うまでもありません。

2.オンラインとオフラインの融合~OMOの登場
 若い世代を中心に、既にデジタル側に住んでいるともいえる人たちが多くいますが、彼らからすると、むしろ“デジタルに拡張された世界自体が「リアル」”という時代でもありますから、これまでの伝統的な考え方や価値観は転換を余儀なくされていると言えます。
 オフラインからオンラインへと生活基盤の移行が進む中、これからの時代に生きる私たちに必要な考え方として提示されたのが“OMO”という概念です。
 OMOとは、2017年頃に提唱された考え方ですが、オンラインとオフラインを融合した社会そのものを前提とした思考法であり、Online Merges Offlineの略です。
 オンラインとオフラインが融合し、一体のものとしてとらえた上で、オンラインにおける競争原理としてとらえる考え方を意味しています。言葉だけではイメージしにくいかもしれませんが、シェアリング自転車やタクシー配車、フードデリバリーなどの事例をイメージすると分かりやすいのではないかと思います。ネットとネット以外の垣根にこだわらずに、あくまでも人がモノやサービスに触れて得られる体験や経験を主軸に考えるマーケティングの一つになります。
 OMOの発生条件は以下の4つです。
・ スマホ及びモバイルネットワークの普及 → いつでもどこでもデータを取得でき、接続が容易にできる
・ モバイル決済浸透率の上昇 → 少額でもどんな場所でも利用が可能になる
・ 多種多様なセンサーが高品質で安価に手に入る → リアルの動作をリアルタイムでデジタル化し、データ活用が可能になる
・ ロボット、AIの普及 → 物流も自動化することが可能になる
 これまでは「インターネットなどのデジタルをどうビジネスに活用するか」という考え方だったわけですが、これからは「リアルな場所や行動も常時オンラインに接続し、データが把握できる環境」が整ってきますので、「オフラインが存在しない状態」を前提にしてビジネスをどう展開するか考えることが重要だということになります。
 何度も繰り返して恐縮ですが、現状、わが国ではまだまだオンラインとオフラインに境界があり、デジタル接点も少ないので「オンラインとオフラインの融合」というと、「今あるオフラインを軸にオンラインをくっつける」、言い換えれば、「デジタルをリアルにどう活用するか」というリアル視点の思考法で考えがちです。
 しかしながら、デジタルの潮流が社会的インフラの土台となる時代においては、「オンラインとオフラインは融合してボーダレスになり、どこでもオンライン化した状態になるため、デジタルを起点とした考え方に発想を転換することが必要」ということになります。この発想の転換がこれからを生きる大きなポイントになると感じています。

3.デジタルとリアルが融合する時代の「人の価値」
 わが国では「デジタルは苦手だ」、あるいは、「デジタル、デジタルというが、結局大事なのは人だ」という経営者は多くいますし、代理店の世界も例外ではないと思います。どうしても「デジタルかリアルか」と分けてしまうので、「デジタルを起点に考えろ」と言われると、反発したり、「何でもデジタルか・・・」というあきらめに似た気持ちになるかもしれません。あるいは、技術の進化は我々の想像を超えて世界中で加速していますので、今起きている変化についていけず、目を背けてしまうかもしれません。
 でも、ちょっと待ってください。むしろこの話は逆なのです。デジタルとリアルが融合し、オフラインが存在しない環境を前提として、「デジタル起点の考え方」が必須となる環境になるからこそ、人や店舗などのリアルチャネル(ハイタッチ)は、デジタルでは提供できない、より高い体験価値や感情価値を提供できる重要な接点となり、独自性や強みを生み出すことにつながることになるのです。
 言い方を変えれば、デジタルが社会の基盤になるからこそ、人の価値が浮き彫りになる、ということでしょうか。これからの時代は、これまで以上に「人の価値」が生きるのです。だからこそ、お客さまにとっての「人の価値・代理店の存在価値」をこれまで以上に強化していくことが重要な競争戦略になります。
 「デジタルかリアルか」という時代感覚から早く脱却しないと、いつまでもあると思っていた一番大事な「リアルの価値」自体を失いかねない時代になっていることを理解することが先ずは重要であると感じています。

 なお、顧客は“オンラインかオフラインか”とかいちいち考えてはおらず、その時最も便利、あるいは価値を感じる方法で買いたい・行動したいだけなので、私たち販売サイドにいるものとしては、様々な顧客接点を選択肢として提供することが必要であることも付け加えておきたいと思います。
 次回は、発想の転換を邪魔する「エイジズム」について考えたいと思います。

以上
Hands-Onコンサルティング
野元敏昭