Find Your Compass(第2回)
アフターデジタルの世界を生きる

 皆さん、こんにちは。Hands-Onコンサルティングの野元です。現在、保険代理店の皆さまの「よろず相談窓口」を目指し、様々な経営支援活動を行っています。本ブログもその一環としてお届けします。
 ブログ第2弾は、~アフターデジタルの世界を生きる~です。

1.ビフォーデジタルの世界観
 現在、デジタル技術の急速な進化を前提として、「“リアルとデジタルのベストミックス”によるお客さまへの価値提供のステージアップ」が各保険会社の共通スローガンとなっていますが、分かったようで分からない方も多いのではないでしょうか。 
 多分、このスローガンを聞いて多くの方が抱くイメージは、次のような世界観ではないかと思います。

アフターデジタルの世界

⇒オフラインのリアルの世界(店舗・人)が中心となっており、新たな付加価値的な位置づけの存在としてデジタルの領域が広がっている状態“リアルかデジタルか”、という世界

ビジネスの世界に置き換えれば、“リアルな世界(実店舗や人)でいつでも会えるお客さまが、たまにデジタルの世界にも来てくれる”イメージでしょうか。従って、企業が施策として打ち出すときは、「デジタルを活用してリアルの価値を上げていこう!」というような打ち出し方になるわけです。

 「リアルかデジタルか」という世界観は、過去からの進化の流れの中で理解することでもありますので、何となく分かりやすいのですが、現代中国がそうであるように、あらゆるところにモバイルやIoT、センサーやモニターが偏在する社会は、現実世界においてもオフラインがなくなる状況になることを想定すると、上記の世界観のままでは思考も行動も社会の変化には追い付かないことになります。
 スマホを持ち歩いているだけでデジタルに常時接続され、リアル行動を含めたあらゆる行動データが瞬時に蓄積される世界では、「リアルかデジタルか」という二元論的な世界は、好むと好まざるとに関わらず、時代に合わない過去の考え方になってしまいます。こうした観点から、上記のような世界観は「ビフォアーデジタル」と呼ばれています。

 では、全てオンラインにつながった世界をどう理解すればいいのでしょうか。この点は業種を問わず、今後のビジネスのあり方を考える際の重要かつ根本的なポイントになります。
 私自身、少しもやもやしながらも、セミナーなどでは「リアルとデジタルのベストミックスの追求」とか分かったような顔をしてお話ししていました。リアルとデジタルの世界をどう捉え、どのように思考を切り替えたらいいか、悩んでいたのですが、ビービッドの藤井保文さんの論考を読んで大きなヒントをもらいましたので、ここでご紹介したいと思います。
(参考:「オフラインのない時代に生きる~アフターデジタル(P46)」日経BP社)

2.アフターデジタルの世界観
 藤井氏によると、現実世界でもオフラインがなくなるような状況になると、「リアル世界がデジタル世界に包含される」図式に再編成されるといいます。そしてこうした現象の捉え方を「アフターデジタル」と呼んでいます。
 イメージは以下の通りです。

アフターデジタルの世界

⇒デジタルで常時接点があるお客さまがたまにデジタルを活用したリアル(店舗や人)にも来てくれる

 「リアルがデジタルに包摂された社会」をアフターデジタルと位置付けるわけですが、今後デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する上で、このアフターデジタルの世界観に転換できるかどうかが大きなポイントになると指摘しています。
 もう少し具体的に申し上げると、上記1.のビフォアーデジタルの世界にどっぷり浸かったままだと、激変する社会の中で生き残ることは非常に難しい時代になっていることを再認識すべきということになります。

 私たちは今、当然のように「デジタルツール」という言い方をして、その活用が重要だと言いますが、すべてがオンラインにつながった世界では、“デジタルに拡張された世界自体がリアルになる”ということですから、むしろ私たちが今リアルと呼んでいるものが「ツール」になるというぐらいの変化が起きているということかもしれません。
 これはある意味、天動説と地動説並みの全くの世界観の転換ですが、デジタルの進化が創る出す世界は、そういう価値転換を生むのだと思います。
 さらに藤井氏は、「DXの本質はデジタル技術を付加価値として活用するというスタンスではなく、『オンラインとオフラインの主従関係が逆転した世界』という視点転換にこそある」と指摘しています。デジタルを基盤とする前提に
立ったうえで、いかに戦略を組み立てていくかが非常に重要になっているのです。
 ここまでくると、すべてがデジタルの力で決まるように思われるかもしれませんが、そうではありません。むしろ、すべてがデジタルにつながる時代だからこそ、自社の強みを生かす戦略のポイントは、「デジタルの活用」ではなく、「リアルの価値の強化」になるということです。
 アフターデジタルに思考を転換した世界では、企業側からするとユーザー(顧客)との接点が急激に拡大する世界になりますが、その多様な接点の中で、リアルの場所は「密度濃くコミュニケーションできるレアな接点」という重要な位置づけになります。
 すなわち、アフターデジタルの世界では、“リアルの価値が今以上に大きくなる”ということであり、リアルのチャネルで、より高い体験価値や感情価値を発揮し、顧客にそれを認識・評価してもらえるか否か、いうなれば「リアルの価値をどう磨くか」という点に、今後の地域密着型代理店の事業存続・発展の鍵があるということだと思います。

 「リアルの価値はなくならないどころか、むしろ大きくなる」のです。皆さまのお考えはいかがでしょうか?

 今回はここまでの整理として、次回は「アフターデジタル型の接点構成」について考えてみたいと思います。(以上)

Hands-Onコンサルティング 
野元敏昭